・朝の見回りの第一現場に到着。
数日前から、この時間でも山の際がうっすらと明るくなり始めてきたものの懐中電灯はまだまだ手放せない、そんな状況。
順番にワナをチェックして回っていると、とあるワナの踏板が思い切りあさっての場所に転がっていました。
ざっと周囲を見回しても特になにかの気配もなし。シカかイノシシかが空弾きついでに蹴っ飛ばしてくれたのだろーかと思いつつ、ワナを再セットしようとワイヤーを手繰り寄せるべく木の根元に近づくと。
!?
息をひそめて何かいる!?

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なんとびっくり、おサルでした。(※写真は明るくなってから撮影)(※※お分かりでしょーか、先日に土手を畑と言われて混乱が生じた、シカが獲れたワナを再設置した同じ場所です)

・同市内でも10キロ以上離れた山の中の集落でおぞましいほど大量のサルの群れを見た事はありますし、また他の猟師さんのくくりワナに掛かったサルの後始末(意味深)をお手伝いしたこともありますが。この地区で見るのは(ついでに自分のワナに掛かるのも)これが初めてです。

サル。
農作物への被害額や被害農地面積はシカイノシシに比べれば少ないものの、そいつらには有効な防護ネットや電気柵を容易く乗り越えて好き放題しまくるために農家さん達からはより忌み嫌われてる、文句なしの害獣オブ害獣です。
有害鳥獣駆除キタコレと喜び勇みつつも、取り敢えずその場はうっちゃって残りの現場の見回りを続行。
サルの止め刺しってドコ刺せばいいんだろーかとか役場に連絡入れる必要あったよーなとか色々考えつつ。農区長さんに紹介された例の現場に到着してみると。

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ついにキターーーーーー!\(*‘∀‘)/

オスシカ、推定体重40kg。
長かったー…
先月下旬に依頼を受けてワナを設置したものの昨年内はずっとスカ。
年末年始の休み中に踏まれた形跡はありましたがその後も不猟続き。
三連休の施錠中にまた上から踏まれて、休み明けには2日連続の空弾き。そーゆうトコだぞ自分。
そしてその後またスカ続きでちょっと落ち込み気味でしたけども。はーやれやれ。やっと農区長さんに顔向け出来ます。

でもなんでよりによってクソややこしいこんな日に掛かるんじゃい。

いえ不満ではないです。ちょっと納得いかないだけで。
不満どころか、危惧していた水路への吊り下がり&死亡済みという最悪の事態でもなく。
こうして活きのいいままで掛かってくれて感謝しかありません…

とか言ってるうちに目の前で水路に落ちやがった!?

ええー…
いやいや、直前まで健在だったんだからまだまだ僥倖と言える事態。
大慌てで様子を確認したところ、後ろ足は水路の底についててワナに括られた前足で半吊りの状態。
今すぐ死んでしまうワケではないですがノンビリは出来ません。肩や背ロースにびしばしダメージ受け続けている状態ですし。

・大急ぎで残りの現場の見回りを終えて、幸いと言うべきか分かりませんけどとにかく残りは全部スカ。
会社へ連絡を入れて状況を説明して今後の動きを確認しようとして、ここで衝撃の事実を告げられました。

サルは獲ったらダメだった。

そもそも今現在、有害鳥獣駆除としてみとめられるのは網掛かりか交通事故に遭ったと体だけ。くくりワナは関係なし。
そしてサルは狩猟対象獣じゃない。
あっれれー。なんか勘違いしてました。てっきりサルを獲ったらお金になるものだとばっかり。
ではワナに捕らえたサルはどうすれば良いのかと申しますと、放すしかないんですねこれが。

って、えぇー……
悪獣イノシシや兇獣アライグマに比べればずっと大人しいですけど、それでも近付いたらキーキー威嚇してきますよ?引っ掻きや噛み付きを喰らったらタダでは済まないでしょうし。そういえばチンパンジーって人の顔面をむしったりするんですってねウフフ。

閑話休題、これを解放するって、どーやって。
まず先にシカを獲って会社へ搬入して、サルの解放は後でまた来る?
でも1円の得にもならない作業のために、片道30分をえっちらおっちら移動するのも勿体ないし。
悩んでいる時間はありません。こうしている間にもシカのHPはガシガシ削られ続けてます。
ええい、ままよ。

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シカやイノシシを運搬するソリ(写真下に転がってるやつ)を盾にして接近し、おっかなびっくりバネを固定しているネジを緩めて完全フリー状態にしました。
写真でバネがでろーんと伸び切ってるのがお判りになるでしょうか。

出来ないでしょうねきっと。でも落ち着いて写真を撮影する余裕が時間的にも心理的にも無かったので仕方ありません。うむ無罪。

とにかく、バネは全く利いておらず荷重ゼロで、手首にワイヤーが巻き付いているだけに等しい状態。こうしておいたら、サルなら自力で外せる筈です。
外せなかったら知らん。
どうせ害獣なんだし、どーにかなってしまったらそれはそれで世のため人のためになるんじゃないでしょーか(外道)。



・その後、シカの元へ取って返して捕獲処理開始。
なんだかんだで30分近く費やしてしまいましたが幸いにしてまだ何とか元気でした。
止め刺しして会社へ運搬して解体処理して、恙なく作業完了したのが11時くらい。
その直前に、社長から指示がありました。曰く、サルをきちんと放してくるように、と。

ええー。
時間がもったいないし多分逃げてるしどーにかなってても誰も困らないしいいじゃないっすかー(畜生)とか意見陳述してみましたが、

「いいから行ってこい」

はい。

獲ってはいけない動物を獲っていて第三者に見付かり通報されたら、後で放すつもりといっても証拠があるわけでもないし最悪免許の取り消しだって有り得る、とのことで。
そう言われてしまうと返す言葉もありません。
午後から別の猟師さんのシカが入って来る連絡がありましたので、それに間に合わせるべく車内でお昼ご飯を齧りながら再び現場へ。

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まだ居たーーー!?Σ( ̄△ ̄;)

ワイヤーを外して逃げるどころか、むしろ捩れまくって超絶・悪化してますがな。
社長の言う通りな状況。恐れ入りました。
ていうか、サルの知能を過大評価していたかもしれませんね僕。

ワイヤーが捩れてバネを圧迫して、再びバネが利いて荷重している状態。もう外しようがありません。なので新兵器を投入。

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ででーん、ワイヤーカッター。



これまでこーゆう状況に陥った場合は、まあ頑張ってなんとかワイヤーを解いてきてたんですけれども。
手や指に痛い思いしてヘタしたら10分近く時間を浪費して、その挙句ワイヤーとかバネとか曲がりまくって結局再使用不可能、なんて事態はザラにありました。
なので最早絡まり方がド酷いときにはぶっち切った方が手っ取り早くて結果も同じ、という事が最近よーやっと理解できてきましたので先日購入していた次第。

というワケで。
再びソリを盾にして身を守りつつ、なんとかワイヤーを切断しました。サルの手首に残るワイヤーはなるべく短い方がいいんじゃないかと気遣って、でもそれだとめっちゃサルに近付かざるを得ないので我ながらエグい程にへっぴり腰になっていた自覚があります。
それはさておき、結果はこれこの通り。

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はよどっか行けよksg。
自由になったことに気付いていないのか。
道具を車に片付けてから戻ってきたら居なくなってました。やれやれ。
手首に残ったワイヤーは、流石に勝手に抜け落ちる筈。戻り止め金具とか使ってませんし。

バネは切らないように、中を通るワイヤーだけを切れるよう頑張りました。
お陰でバネは再利用できそうな様子。

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捩れまくったワイヤーの様子。

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なぁにコレぇ…
何をどう頑張ったらこんな有様になるのか。史上最悪レベルに捩れてます。
そして事ココに至ってようやく気が付きました。
おサルの手首に残ったワイヤー。そこにOリングばねが付いたままだという事に。
Oh…早くも1コ紛失かい。ぐぬぬ。



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